■ダイオードの構造 (PN接合)
ダイオードは上図のようにP型半導体とN型半導体がくっついた構造となっており、これをPN接合という。P型半導体は正孔をもっており、N型半導体は自由電子を持っている。
ただし、PN接合部は正孔も自由電子も存在しない “空乏層” となっている。P型半導体の正孔は電子を要求するものであり、逆にN型半導体は電子を余分に持っているものである。そのため、互いの正孔と電子が結合して空乏層が生じるのである。
しかし、空乏層は全体には広がらず、ある程度の幅に制限される。元々、N型半導体とP型半導体は単体では電気的中性の状態である。そのため、PN接合によりN型半導体が自由電子を失うと、その部分は正に帯電しているとみなせる。同様に、P型半導体は正孔を失うので、その部分は負に帯電していることになる。
すると、空乏層の内部には上図の電界が発生することになる。 この内部電界によって、電子と正孔の移動が妨げられて、空乏層はある程度の幅に制限されるのである。ちなみに、空乏層の幅は不純物の濃度によって決まる。濃度が高いほど、空乏層の幅は狭くなる。濃度が高いと多数の正孔と電子が結合するので、狭い領域であっても内部電界が強くなるためである。
■整流動作
PN接合されたダイオードは電流を一方向にしか流さない整流作用を持つデバイスである。その動作について説明する。
PN接合に上図の向きで電源を接続した場合、電源によってP型→N型の向きに電界がつくられる。これは内部電界を弱めるように働く。
内部電界によって移動を妨げられていた電子や正孔は、電源による電界によって電子と正孔の移動を始める。電子と正孔のペアは結合をして消滅する。しかし、P型半導体は正孔を持とうとする性質があるため、電子を放出する(=正孔が生じる)。逆にN型半導体は自由電子を持とうとする性質があるため、電源から新たに電子が供給されることになる。結果として、P型→N型の方向に電流が流れる。
このとき、電圧と電流の関係は上図のようになる。約0.6[V]程度まではほとんど電流が流れず、それ以上になると急激に電流が流れるという特性となる。
では、逆方向に電源を接続した場合はどうなるか?今度は内部電界を強める方向になるため、正孔や電子は移動できない。つまり、電流は流れない。
上記の通り、PN接合されたダイオードはP→Nの一方向にしか電流を流さない素子である。P→N方向に電流が流す電圧の向きを順方向、その逆で電流が流れない電圧の向きを逆方向と表現する。
PN接合された2端子の素子をダイオードといい、P型側の端子をアノード(陽極)、N型側の端子をカソード(陰極)と呼ぶ。回路図記号は上図のように電流の向きを示すようなものになっている。