■GPSとGNSS
GPS(Global Positioning System)は、人工衛星から送信される信号を用いて自分の位置を測定(=測位)するためのシステムのこと。世間的には、GPSが有名であるが、これはアメリカが運用している測位衛星のシステムであり、他の国においても同様のシステムが運用されている。これら各国の測位衛星システムを総称して、GNSS(Global Navigation Satellite System)という。近年では、各国の測位衛星システムを組み合わせて測位を行っている。
・GPS(ジーピーエス):アメリカが運用。
・Glonass(グローナス) : ロシアが運用。GLOと略して表記されることもある。
・Beidou(ベイドゥ、北斗):中国が運用。BDSと表記されることも。
・Galileo(ガリレオ):EUが運用。GALと表記されるころも。
・QZSS(キューゼットエスエス、みちびき):日本が運用。
■GPSの仕組み : どうやって測位しているのか。
GPSは衛星、管理局、移動局(ユーザー)の3つのセグメントで構成される。
・衛星
約2万km上空を飛行している。衛星は管理局によってコントロールされており、軌道修正も管理局によって制御されている。衛星は、決められた時刻に信号を送信することになっており、例えば時刻情報や自身の軌道情報(航法データ)などを送信している。
・管理局
衛星の軌道を追跡したり、衛星の軌道補正などを行っている。管理局の方で各衛星を制御しているため、予定として “ある時刻に各衛星がおおよそどの位置にいるのか” という情報を持っている(=後述のアルマナックに該当)。
・移動局(ユーザー)
移動局はスマホとかカーナビなどで測位をしたいユーザを思い浮かべればOK。移動局は衛星からの信号を受信して、受信時刻を確認する。
・測位の流れ
[1] GPS衛星が航法データを送信 (送信時刻と軌道情報を載せる)
[2] 移動局が衛星からの信号を受信して、そのときの受信時刻をチェック。
[3] 受信データより、電波が衛星から移動局に到達するまでの時間がわかる。(送信時刻と受信時刻の差)
[4] 電波の速度は光速 c で一定であるため、衛星と移動局の距離 D が演算できる。
[5] 衛星の軌道情報(位置)は既知であるため、衛星を中心とした半径 D の球面上に移動局がいるということがわかる。
[6] 上記の[1]~[5]を衛星3台に対して行えば、移動局の位置は2点に絞り込める。移動局は地球上にいる、という前提を考えると、この時点で移動局の位置情報は1つに絞り込める。
※実際は移動局の時刻誤差であったり、電離層による電波の伝搬速度の低下などによってずれが生じるため、実質はもっと多くの衛星から信号を受信する必要がある。
■GPSの情報まとめ
運用国 : アメリカ
衛星数 : 24 (2016年時点)
通信方式 : CDMA
変調方式 : BPSK / DSSS
帯域幅 : 2.046MHz
中心周波数 : 1575.42MHz (L1帯)
周波数帯 : 1574.397MHz~1576.443MHz (L1帯)
■Glonassの情報まとめ
運用国 : ロシア
衛星数 : 24 (2016年時点)
通信方式 : FDMA、一部CDMA
変調方式 : BPSK / DSSS
帯域幅 : 1.022MHz
中心周波数 : FDMAのため、衛星によって異なる。
⇒計算方法は1602MHz + k × (0.5625MHz)。kは衛星番号で、-7~+6の整数となる。
周波数帯 : 1597.552MHz~1605.886MHz
■Galileoの情報まとめ
運用国 : EU
衛星数 : 30 (2016年時点)
通信方式 : CDMA
変調方式 : BOC / DSSS
帯域幅 : xxx MHz??
中心周波数 : 1575.42MHz
周波数帯 : xxx MHz??
■Beidouの情報まとめ
運用国 : 中国
衛星数 : 14 (2016年時点)
通信方式 : CDMA
変調方式 : QPSK / DSSS
帯域幅 : 2.046MHz
中心周波数 : 1561.098MHz
周波数帯 : 1560.075MHz~1562.121MHz
■QZSSの情報まとめ
運用国 : 日本
衛星数 : xxx
通信方式 : CDMA
変調方式 : xxx
帯域幅 : 2.046MHz
中心周波数 : 1575.42MHz
周波数帯 : 1574.397MHz~1576.443MHz (L1帯)
■GPS衛星の送信データ
GPS衛星から送信されるデータは航法データやNAVメッセージなどと呼ばれる。
航法データは5つのサブフレーム(1つあたり300bit)で構成される。1フレームは1500bitとなる。ビットレートは50bpsであるため、1フレームの送信には30秒かかる。
航法データには「エフェメリス」と「アルマナック」というデータが含まれている。エフェメリスはその送信衛星自身の軌道情報を持っている。測位には”時刻情報”と”エフェメリス”が最低限必要である。アルマナックは全衛星のざっくりとした軌道情報を持っている。アルマナックは測位演算に直接使用しないので、なくても測位はできる。アルマナックは”どの衛星の信号から優先的に演算処理をするか”に使用するらしく、測位時間が少し早くなるようである。アルマナックはデータ量が25フレーム分になるので、全データを受信するのに最短で12.5分かかる。